研究内容


強相関電子系のNMR

 我々は強相関電子系について核磁気共鳴法(NMR)を測定手段として研究しています。 金属絶縁体転移や超伝導、低次元磁性を示す酸化物を主な研究対象にしており、 物理現象としては量子相転移、量子臨界現象に興味を持っています。 普通の相転移では状態変化を起こす温度をパラメータとしていますが、量子相転移は絶対零度で起こる相転移であり、圧力や原子置換がパラメータになります。このため、圧力装置開発にも興味を持っています。  NMR法は、医療機器の磁気共鳴画像(MRI)に応用されており、局所的な情報を得るツールとして広く知られています。圧力下でNMR法を行う場合、ある程度の大きさの試料を必要とするため、加えることのできる圧力に限界があります。常圧とほぼ同じ条件での測定が可能なのは ピストンシリンダー型圧力セルを用いた場合のみです。 通常は3万気圧以下ですが、当方では定荷重加圧方式を採用することで4万気圧まで測定が可能です。 Review of Scientific Instruments, 78 (2007) 073905

 研究成果の一例を以下に示します。これは(10)のLaFeAsO1-xHx の系においてNMRから求まる低エネルギーの磁気揺らぎを相図にマッピングしたものです。 詳しくは、低温物質科学研究センター誌(LTMセンター誌)第32号 2018年 6月発行 3頁 を参照してください。


 
上のカラーマップにおいて、橙色は磁気揺らぎの大きい領域を、青色は揺らぎの小さい領域を表す。常圧では超伝導はダブルドームですが、3.0 GPaでは シングルドームになります。超伝導転移点の最大値最小値は、ともに磁気揺らぎの小さいところで現れることから、磁気揺らぎと超伝導に直接的な相関はないといえます。

現在のテーマ
(11)鉄セレン系高温超伝導体 FeSe1-xSx
共同研究者:芝内孝禎教授(東大新領域), 松田裕司教授(京大理), 上床美也教授(東大物性研)
2018-
(10)鉄砒素系高温超伝導体 LaFeAsO1-xHx
共同研究者:飯村荘史助教, 松石聡准教授, 細野秀雄教授(東工大)
20012-2018
(9)鉄砒素系高温超伝導体 Fe2As2Ca6(Al, Ti)4Oy
共同研究者:荻野拓助教, 岸尾光二教授, 下山淳一准教授(東大工)
2010-2012
(8)鉄砒素系高温超伝導体 Ca(Fe1-xCox)AsOF
共同研究者:松石聡助教, 細野秀雄教授(東工大)
2010-2012
(7)鉄砒素系高温超伝導体 LaFeAsO1-xFx
共同研究者:高橋博樹教授(日大), 神原陽一郎講師(慶大), 平野正浩教授, 細野秀雄教授(東工大)
2008-2012
(6)4万気圧での物性測定:梯子格子銅酸化物 Sr2Ca12Cu24O41 4万気圧下NMR
共同研究者:内田慎一教授(東大理)、藤巻洋介氏、松本武彦博士(物質材料研究機構)、上床美也准教授(物性研)
2004-2009
(5)圧力誘起超伝導体 β-AgV6O15
共同研究者:上田寛教授、山内徹氏 (東大物性研)
2005-2009
(5')Ca3Co2O6:フラストレート系三角格子
共同研究者:Sampathkumaran教授 ( Tata Institute)
2003

研究室発足以前に研究した物質,現象
(東大物性研安岡研、毛利研、上床研にて)


(4) 梯子格子銅酸化物 圧力誘起超伝導体 Sr2Ca12Cu24O41 3.5万気圧下NMR
共同研究者:内田慎一教授(東大理)、本山直樹博士(現青山学院大)、松本武彦博士(物質材料研究機構)
1999-2003
(3) S=1/2 Heisenberg chain LiV2O5
共同研究者:上田寛教授、磯部正彦博士 (東大物性研)
1996-1998
(2)梯子格子銅酸化物 SrCu2O3 の不純物効果
共同研究者:高野幹夫教授、東正樹准教授 (京大化学研究所)
1996-1999
(1) 鉄族(3d)電子系 heavy fermion system LiV2O4
共同研究者:上田寛教授 (東大物性研究所)
1995-1998

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藤原研究室